はぎの
この企画も3年目(3回目)になりました。琉球大学教育学部の普段着の姿を受験生や高校生の皆さんなどにお届けするため、教育学部を知り尽くした4年次のお二人に、教育学部で過ごす学生生活の話などをうかがいます。よろしくお願いします!
はぎの
定番の質問から入りますが、二人はなぜ琉大の教育学部に進学しようと思ったの?そして、なぜ今の専修を選んだのですか?
すみか
わたしはもともと教育学部志望で、琉球大学には教育学部があったからです。親が教員なので影響を受けて育ったこと、高校の時にお世話になった先生への憧れ、そして家庭科が好きで、沖縄県での家庭科の学びに料理や服飾など伝統文化に関することを取り入れられる先生になりたくて、家庭科の教員を養成する生活科学教育専修を選びました。
はぎの
お料理やお裁縫が、ずっと好きだったの?
すみか
小さいときから祖母がよく洋服をつくってくれて、そばで見たり手伝ったりしているうちに、自然と裁縫に関心を持ったんです。お料理も好きです。
はぎの
加えて、親御さんの影響による教員への関心が、ずっとあったんですね。目指している学校種は?
すみか
より専門的なことが扱える、高校の教員です。
ゆうた
ぼくは小学生から算盤をやっていて、その頃は算盤の先生になりたかったんです。小中学校通じて算数・数学が得意で、中学校ではすばらしい数学の先生にも出会えました。部活でハンドボールをやっていたんですが、その顧問でもあって、「こんな先生になりたい」と自然に思うようになりました。
はぎの
やっぱり出会った先生の影響って大きいのね。
ゆうた
それと、中学生のときに通っていた塾の先生が全員琉大生だったんです。この人たちがみんなめちゃくちゃ楽しそうで、「琉大って絶対楽しいんだな!」って思って(笑)。「数学科」は県内では琉大しかないし、自宅からも近い(笑)。いろいろな条件が揃ってました。
はぎの
運命ですね、それはもう(笑)。ゆうたさんは確かアルバイトで塾の先生をしてますよね。もしかして、出身の塾?
ゆうた
残念ながら空いていなくて、系列だけれども別の塾です。そういえば、塾でアルバイトをしたい!というのも、大学生になりたい一つの要因だった・・・実現できて良かったです。
はぎの
中学時代に通っていた塾の先生は教育学部生?
ゆうた
教育学部はいなくて、理学部とか農学部とか。でも、どの先生も教えるのが上手で、大学生という存在に憧れました。
はぎの
二人ともオープンキャンパスには来たのかな?
すみか
はい!
ゆうた
はい!
はぎの
おそらく琉大教育学部に何らかのイメージをもって入学してきたと思うのですが、入学してみて、教育学部はイメージどおりでしたか?
ゆうた
教育学部はひたすら「教育!」で、教える系・実践系をがっつりやるイメージだったんですけど、実際にはたくさんの専門的な理論を学ぶんだなって、入学して実感しました。教科書をどう教えるかというテクニックを学ぶものと思っていましたが、実際には教科書の裏とか奥にあるものを学ぶことが多い点が、入学前のイメージとは違いました。
はぎの
実践を支える専門性って、教職を支える背骨的なものですよね。数学教育専修は、特にそういうところを重視しているかもしれない。
ゆうた
そうですね!
すみか
わたしはちょっと違って・・・わたしの場合、進学校出身で、日々机に向かう環境にいて、「大学に入ってもがっつり勉強の日々なんだろうな」って覚悟して入学したんです。
はぎの
案外がっつりでもなかったと?
すみか
・・・そうですね、高校では一人で勉強するって感じだったのが、大学では、仲間みんなで意見を出しながら協力しあって勉強するって印象が強くて、それが楽しいなって思います。勉強に対するイメージが変わりました。
ゆうた
うんうん。
すみか
それに、入学した生活科学教育専修で、とってもすてきなメンバーに恵まれて、勉強も含めてすごく毎日が楽しいんです。
はぎの
すみかさんの学年の生活科学教育専修は、7人の学生がいるんだったね。
すみか
はい、小学校(教育コース)が4人に、中学校(教育コース)が3人。生活科学の他の学年はもっと少なくて、中には小学校の学生がいなくて中学校のみ3人という学年もあります。7人もいるのはありがたかったです。
はぎの
さっき、すみかさんが話してくれた「みんなで学ぶ」というのは、いま学校教育で重視されている「対話的な学び」「協働的な学び」の世界を、大学の学びの中で体験できたということになりますよね。
はぎの
これまでの大学生活を振り返って、印象に残っている授業はありますか?
すみか
いっぱいあるのですが、三つに絞ります(笑)。一つめは、浅井(玲子)先生(※1)の「家族と生活」という授業です。うるま市で子どもを預かる「からふる田場」という施設に行く機会があって、子どもたちと関わったうえで、現場に勤めている方々から子どもの実態を聞くことができて、それが自分の中で衝撃というか、いろいろ考えさせられました。
はぎの
生活科学教育専修の専門の授業ですね。
すみか
はい。そこの代表者の方が、たまたまわたしが幼稚園時代に通っていた学童の先生で、たっぷりお話を聞きやすかったんです。二つめは、同じく浅井先生の「家庭科教育法」で「アイスの授業」というのがあって。
はぎの
「アイスの授業」?
すみか
普通は教科書などの教材がまずあって、それをどう教えようというところから始まると思うんですが、この授業では、「アイス」という題材だけがあって、じゃあ、これをどういうふうに教材にするか?と考えるんです。わたしが実践したのは「アイスづくり」だったんですが、扱い方によっては添加物の話につなげたり、食品表示について学ぶことにつなげたり、いろいろな展開ができて刺激的でした。
はぎの
まさに「授業づくり」を楽しんだわけね。
すみか
三つ目は、國吉(真哉)先生(※2)の「住生活学」という授業で、自分で理想の家をデッサンしてから模型にするんです。物理的な住みやすさはもちろん、心の面というか、理想の家族のありかたを思い浮かべながら間取りを決めていくのが楽しくて、模型で建築しているうちに、そこまでは必要なかったんですけど色を塗って、庭までつくって(笑)。
ゆうた
(笑)
はぎの
(笑)
すみか
受講者一人一人が一軒の家を建てて、楽しかったです!
はぎの
生活科学教育専修の家庭科の授業は、ほんとうに「生きている」ことに直結する面白さがありそうですね。ゆうたさんはどうですか?
ゆうた
敢えて数学ではなく(笑)・・・その頃は語学の授業が対面で出来たせいもありますが、1年次前学期で履修した「ベトナム語」の授業です。担当の先生(※3)も面白い方だったし、数学科の仲間みんなと履修したこともあって楽しかったという単純な理由もあるんですけど、大きかったのは、履修を終えてからの夏休みに・・・。
はぎの
夏休みに?
ゆうた
「リゾートバイト」というのに申し込んで、新潟のホテルに行ったんです。そしたら宿泊客にベトナム人が二人いて、「おっ、喋ってみよう!」と思って話しかけたら、「あっ、ほんとに通じる!」ってなって(笑)。
すみか
(笑)。
はぎの
(笑)。
ゆうた
偶然なんですけど、そうやってすぐに会話の実践を経験できたのがインパクトあったし、もちろん授業自体も面白かったし、今でも印象に残っています。
はぎの
数学の授業は?
ゆうた
湯澤(秀文)先生(※4)と多和田(実)先生(※5)が担当してくださった「数学科教育法」の授業で、どちらの先生も「なんでこうなるんだろう?」という生徒に向ける問いかけを、自分たち学生にしてくださって、そこから「どうやって子どもに教えよう?」という試行錯誤が自然と生まれる授業だったので、それは教師になりたい自分には面白く感じる授業でした。
はぎの
自分たちも子どもになったつもりで探究していくのが、いいですね。さらに聞くけれど、そういった授業で、特に印象に残った先生方からもらった言葉などはありますか?
すみか
あります!浅井先生からの「先生自身が実践前からわくわくするような授業じゃないと、子どもたちもわくわくしないよ」って言葉です。「アイスの授業」みたいな「とっておき」の授業があると、授業をする前から教員としての自分も楽しみだし、それはきっと子どもたちにも伝わると思うんです。現場に出たらいろいろ忙しいと思うんですが、そういう授業づくりを大事にしていきたいなっていう思いが、すごくあります。
ゆうた
先生がわくわくするのが大事、まちがいない(笑)!ぼくは、多和田先生が高校教員としての経験も踏まえておっしゃった、「どんなにすばらしい授業でも、生徒が寝ていたら、結局は失敗」「逆に、どんなにふつうの授業でも、生徒が起きていたら、成功」という言葉が心に残っています。いかに、生徒の興味を引きつけるか・・・特に数学って、探究も大事ですけど、やっぱり計算みたいな演習の繰り返しも大事だと思っています。その、単調な演習をしなければならない場合でも、いかに生徒を寝させずに引きつけるか。そういうことを考えるのも、大切だなって。
はぎの
その場合は、教材の魅力だけじゃなくて、教員自身の魅力も必要ってことかな・・・?
ゆうた
(大きくうなずく)それに、コミュニケーションだったり、雰囲気づくりだったりが、大事かなと思っています。
はぎの
教員になる上で、これは貴重な経験だったなという授業以外の大学生としての活動があれば、ぜひ聞かせてください。
すみか
わたしもゆうたさんと同じように塾のアルバイトをしているんですが、子どもたちとの関わりであったり、講師同士の協働であったり・・・今後役に立ちそうだなと思っています。
はぎの
気になる子どももいましたか?
すみか
「自己肯定感が低い」ってよく言いますけど、確かに、自分に自信のない子が多いなって、塾のバイトを始めたときに思いました。なので自分の授業では、なるべく褒めることを意識しました。ちょっと出来ただけでも「すごいね~!」と大げさに言ってみたりして。それで少しずつ自信が持てたのか、すごくがんばって勉強するようになって、「こんな点数取ったよ!」って報告してくれる子がいたりすると、すごく嬉しい。やっぱり「成功体験」を多く与えるのが大切だなって実感しています。
はぎの
すでに教員の発想ですね(笑)・・・沖縄の子どもは自己肯定感が低いと言われますが、今は日本の子どもみんなにそういう傾向が強くなっているようですし、学校教育の大きな課題ですよね。
ゆうた
ぼくも塾での経験は大きいですが、それ以上にやっぱり「コックさん学校」(※6)ですね。
はぎの
ゆうたさんの「コックさん学校」との出会いがね、なかなかないことなんですよね。
ゆうた
小学4年生のときに、教育学部の「コックさん学校」にぼく自身が参加したという(笑)、その記憶もありますし、大学に入学してから「なにかするぞ!」っていう浮き浮き感のままに「コックさん学校」に入ったって感じです。
はぎの
小学4年生で児童として参加したときの記憶はあるの?
ゆうた
正直いうと授業で何をやったかは全然覚えていなくて(笑)、授業が始まる前とか授業と授業のあいだとか、そういった時間に先生たち(学生たち)と遊んだなとか、外の芝生でみんなで写真を撮ったなとか、そういうのをちらちら覚えています。それと、コックさんで撮った写真を見返していて気付いたんですけど、出身校の国語の先生に「コックさん学校」の先生がいたんですよ。
はぎの
世間は狭いですね(笑)。晴れて先生の立場で参加した「コックさん学校」はどうでした?
ゆうた
そうですね・・・1年生のときは、自分からは何一つ動けずに、全部先輩に任せっきりでした。なので活動全体が終わったときに、「あれ?自分、結局、何もしてない?」って思って、打ち上げの食事会でも「自分にここにいる資格かあるのか?」って、すごく落ち込んで。大学生としての自分にも自信をなくしたくらいだったんです。
はぎの
うん・・・。
ゆうた
「大学生としてどうなの、自分?」「大学やめようかな」とまで考えもしたんですが、仲間が励ましてくれて、だんだんと「コックさんで落ち込んだぶんは、コックさんで取り戻そう!」って思うようになって、2年次でも参加することにしました。2年次では「一生懸命やる!」と決めていたので、同級生の授業づくりを手伝うのはもちろん、先輩の授業づくりにも積極的に関わりました。
はぎの
頼る人から頼られる人になったのね。
ゆうた
はい、そんな感じになれたかなって思えました。コックさんで下がって、コックさんで上がって、それがそのまま大学生活を乗り切る原動力になった気がします。
はぎの
3年次では校長先生でしたしね。「コックさん学校」は集中して実践する期間は大変だから、1年でやめてしまう学生もいるけれども、そこでやめなくて、何かを得たわけですね。そうそう、授業以外の活動といえば、すみかさんは、大学で部活動を続けてきたんですよね。
すみか
わたしは入学直後からバレーボール部に入って、今でも続けているんですけど、部活から学んだことはほんとうに大きいです。今はゲームキャプテンをさせてもらっているんですけど、1年、2年、とそれぞれの立場だからこそ学べたことがありました。1年次のときは、部活の先輩が身をもって、人との関わり方を教えてくれた感じです。
はぎの
・・・というと?
すみか
たとえば、話に入り切れていない後輩がいたら、「今日なんかTシャツ派手じゃない?」とか、さりげなく「いじって」うまく輪の中に入れるんです。こういう輪の広げ方を学んで、先輩方には敵わないですが、自分の学年が上がったら私もそれを大切にするように心がけていました。人間関係のつくりかた、技術ってほどでもないんでしょうけど。
はぎの
今はキャプテンで、大変なこともありそうね。
すみか
はい。大学の部活は高校時代のような指導者の先生がいないので、自分たちだけでチームを作っていかなければならずそれが大変です。出身や学年も異なる、いろんな考えを持ったメンバーが集まっているので (笑) 。でも、逆にそれが大学の部活の面白いところだと思います。多様な個性を持った仲間たちと一緒にバレーができて、最高に楽しいです。
はぎの
指導者のいる部活もあるけれども、バレー部は男子も女子も指導者なしで、自分たちで練習メニューも考えて、遠征の手配もしているそうですね。
すみか
はい。学年ごとに役割分担をして動いています。それから、もうひとりのチームキャプテンの後輩といつも相談し合っていろいろ決めています。本当に良い経験をさせてもらっています。
はぎの
苦労はあっても、将来に絶対に役に立つ苦労であり、その苦労自体が実りですよね。
すみか
バイトもしっかりやっていたので、部活もあって、授業の課題もあって、すごく忙しいんですけど、わたしはバイトか部活かどちらかではなくて、両方やることで自分にとって良い効果があったと感じています。どちらかで落ち込んだときは片方が救ってくれるし、両方うまくいっているときには相乗効果になるようなこともありました。
はぎの
とてもいいメッセージですね。もちろん、しんどい時期はあったと思うけれども。
すみか
今もしんどいんですけど(笑)、他のメンバーも同じように頑張っているし、バレー部の仲間はやる気があふれているので、それに背中を押されている感じです。
はぎの
では、話題を変えて、卒業研究について聞かせてください。
すみか
わたしは卒業研究では「食」を取り上げたくて、田原(美和)先生(※7)の「食ゼミ」に入りました。卒業研究のテーマは「沖縄そば」です。
はぎの
それは具体的に何をどう研究するの?
すみか
「沖縄そば」を授業で取り扱うことはあまりないと思うので、「沖縄そば」の調理実習を軸にした授業を構想したいという思いが最初にありました。きっかけは、わたしの家ではもともと年末に親戚が集まって年越しの「沖縄そば」をそばから作る習慣があって、その話を誰かにすると、「そばから手作りしたことなんてないよ」という反応が多くて、「それならば沖縄の学校で、そばの手作りからやってみたらどうだろう?」と思ったんです。「沖縄そば」の歴史も調べてみると奥が深いので、これはますます教材にする価値があると。
ゆうた
どんな歴史?
すみか
中国から伝わった「唐人そば」と呼ばれる中華麺が由来なんですけど、歴史をたどると昔の人のそばの製造法が面白いんです。今は、小麦粉に「かんすい」という添加物を混ぜることで、沖縄そば独特の黄色い色が出たりまとまったりするんですけど、昔はそれがなかったので、燃やした木を水に漬けて出てくるうわずみを・・・
はぎの
あ~、「木灰(もっかい)そば」ね!
すみか
そうですそうです、それが「かんすい」と同じアルカリ性なので、「かんすい」と同じ働きをするんです。そういった歴史も学びながら、授業の調理実習では今の作り方で作ってみようと。
はぎの
だしもお手製になるの?
すみか
だしはちょっと、時間的が足りなさそうで難しいんですけど(笑)。でも、昔の人のそば作りにはすごく知恵があるので、それも学んでほしいと思っています。
はぎの
昔の人の作り方も、やろうと思えばできる?
すみか
はい、実際に中部農林高校で木灰を使ったそば作りを実践しました。すごく時間がかかるんですけど、化学物質を一切使わなくて、ヘルシーです。
はぎの
自分の生きている土地の文化に関わる、すてきな研究だね。
ゆうた
ぼくは多和田先生のゼミで卒業研究に取り組んでいるんですけど、いま目指しているのが中学校の数学教員なので、各分野・各単元で、それを学ぶ意味が凝縮されたようなモデル的な教材を、それぞれにつくろうと思っています。たとえば方程式であれば、今の時代、計算機があればいいじゃんってなるけど、方程式を知っていたり使ったりするメリットだとか、こういう場面で方程式の知識が生きるんだよねっていうことだとかを、教え込みじゃなくて、子どもたち自身が発見して、学ぶ意味を実感してもらえる教材をつくりたいなって思っています。
はぎの
年間カリキュラムにはめこんでいくイメージなの?
ゆうた
そうですね・・・子どもによって、計算系は嫌いとか図形系は嫌いとかあると思うんですけど、各単元に「この授業はおもしろかった」とみんなに思ってもらえるようなトピック的な教材があればいいなと。それぞれの単元に1つ、2つ、印象に残る授業を置きたいです。
はぎの
そういう「わくわく」教材があると、教師も楽しみですからね。着々と進んでいるの?
ゆうた
まだ教材づくりまでは行っていなくて、今は理論を固めるために論文を読んでいる段階です。一緒に研究している友人も、地元に帰って教育実習中だし、ぼくも来週から教育実習だし、まずは実習、そして採用試験に集中って感じですね(笑)
はぎの
ゆうたさんは、中学校の先生になりたいのね。小学校ではなく中学校にしたのは、やっぱり数学が面白くて、少しでも高いレベルのことがやりたいから?
ゆうた
う~ん、それもありますけど、実は、中学校で部活動の顧問がしたいんです。
すみか
ハンドボールの?
ゆうた
そうです。自分の中学時代を振り返ると、さっきも言ったように顧問の先生がすばらしい人で、自分の中で学校に行きたくないなって思うような時期でも、その顧問の先生がいてくれる部活があるから学校に行けたって経験があるんです。自分も、そういう顧問になりたいなって思うんです。
はぎの
今、教員が大変な仕事だっていうことで、部活の顧問は地域の人材に任せましょうという動きも大きくなりつつあるけど・・・
ゆうた
ぼくは顧問がやりたい(笑)。
はぎの
すみかさんは、専門的なことがやりたいから高校って言っていたし、それぞれに明確な目的があるんですね。
すみか
高校は社会に出る一歩手前なので、これから自分で生活していくかもしれないってことで、家庭科の学びがダイレクトに生きることに結びつく、そういう中で家庭科を教えたいって思いがあります。
はぎの
二人の卒業研究も、教師としての自分がやりたいことに結びついていますしね。教育学部ならではの卒業研究ですね。
はぎの
二人の仲間にもいると思うんですが、教育学部に入ったけれども、教師・教員の道を諦める学生も少なくないですよね。そんな中で、二人が、教員志望のままここまで来られた理由は、なんでしょうか?
すみか
わたしは、働く両親の姿を見続けているので、自分もそうなるというイメージが自然にあります。それと、大学で家庭科について学べば学ぶほど面白くて、その面白さを、教師として子どもたちに伝えたいという気持ちが、どんどん強くなっています。繰り返しになりますが、家庭科は必ず生きることに結びつくので、それを子どもたちに伝えたいです。
ゆうた
ぼくは、算盤から始まってずっと算数・数学が好きだっていうこともあるんですが、中学校生活でくじけそうになったときには部活の顧問の先生が、大学生活の中で挫折しかかったときには周囲の仲間が、支えてくれました。中学時代には、塾のバイトの先生方という存在も自分に大きな影響を与えてくれました。そう考えると、自分も誰かの支えになりたい、自分も誰かに影響を与えられるんじゃないかって思いが出てきて、それはやっぱり教員だよなって。そもそも目立ちたがりってこともあるし(笑)、死ぬまでに・・・
すみか
死ぬまでに・・・(笑)?
はぎの
死ぬまでに・・・(笑)?
ゆうた
死ぬまでに(笑)、できるだけ多くの人に印象を残してから死にたいと思って(笑)。教員って、それができる職業だなと。
すみか
確かに(笑)。いろんな子どもたちと関わるしね。
はぎの
「ゆうた先生のことは絶対忘れない!」って思ってくれる子どもを沢山育てようね(笑)。
ゆうた
そうですね(笑)。
はぎの
でも、まじめな話、憧れられる先生になりたいっていう意思は、教師・教員としての自分を高めてくれるだろうから、とても大切だと思う。それに、いくらロボットやAIが進化しても、「憧れて」もらえるのは人間ですしね。では逆に、教員を目指すにあたって心配なこと、不安なことってありますか?
すみか
わたしは心配というか、自分がもう少し専門性を深めてから自信をもって現場に行きたいなって思いがあるんです。それもあって留学を決意しました。
はぎの
卒業を延期して、これから留学するんですよね。
すみか
ハワイ大学ホノルルコミュニティカレッジに、ファッションテクノロジーコースという洋裁を専門的に学べるところがあって、「衣」についての専門性を深めたいと思っています。「衣」だけでなく衣食住通して文化を全般的に学びたいし・・・沖縄と共通するところも多いので。
はぎの
ハワイ大学は・・・
すみか
琉球大学との交換留学制度がある大学です。その制度を使って留学します。教育学部の学生がこの制度を使うのは初めてらしいんですが、前々から生活文化を学ぶのに留学できればいいなとは思っていて、4年次になってようやく実現できました。
はぎの
ハワイ大学との交換留学制度については知っていたけれども、教育学部生とはあまり結びついていなかったですね。教員になる前のパワーアップとしての留学・・・帰国後にまた話を聞かせてほしいですね。教育学部で出来ることとしてアピールさせてもらいます(笑)。
すみか
(笑)。8月に出発して来年の5月まで10か月の留学で、卒業はみんなより1年遅れますけど、生活科学教育専修の同期にはもう一人、サンフランシスコに留学している子がいて、その子は保育に関心があるので、オペア(ベビーシッター)として働きながらのオペア留学をしているんです。
はぎの
1年卒業が遅れるにしても、それだけの価値がありますね。楽しく学んできてくださいね。
ゆうた
ぼくは、「印象に残りたい」とは言ったものの、実際には中学生という難しい時期の子どもたちを相手に、どの子たちともしっかり関われるかなっていうことは、ちょっと心配ですね。
はぎの
もちろん心配は尽きないだろうけど、そこは、現場に出て、経験を積んでいくことですよね。先輩教員もみんなそうして来たわけだし、自分が心を開けば、そういう先輩教員の誰かが助けてもくれるでしょうし。それにしても二人とも、心配や不安すら、前向きな内容ですね。
はぎの
琉球大学教育学部の雰囲気って、どうですか?
ゆうた
大学に来て感じたのは、県外出身の学生も多いので、多様な仲間、多様な考え方に触れられるなってことです。入学直後は、友達とつるんでいると、「ここは沖縄か?!」と思うことも結構ありました。県外出身の学生が話す、印象に残った先生像とかも違うんですよね。いろんな地域の教育観も聞けていいなと思います。
はぎの
なるほどね。県外出身の学生が増えているから、カルチャーショックを受ける機会も多いわけね。
ゆうた
急に方言で話し出す仲間もいます、「・・・だけん」とかって島根県のことばで(笑)。島根県はしじみの産地だからって、しじみについて詳しく話してくれたり。
はぎの
その学生は、コックさん学校の学生ですね(笑)。しじみを教材にもしていたでしょ。しじみを単位にして、1㎝・2㎝・・・じゃなくて、1しじみ・2しじみ・・・って。「この人の身長は、何しじみでしょうか」って。
すみか
面白い~(笑)。県外出身の友達は、確かにカルチャーショックを与えてくれます。
ゆうた
教育学部の教員については、専門性、ご自分の研究の特性を強く授業に出してくる先生もいれば、自分の生活の中での趣味を教育に全力で活かすという感じの先生もいて、ほんとうにいろいろです。でも全体的には、教育学部は話しやすい先生が多いと思います。
すみか
わたしは中学校教育コースなので、どうしても生活科学教育専修の先生方との関わりが中心になってしまうんですが、家庭科だからなのか、とにかくアットホームです。おばあちゃんみたいな存在、おかあさんみたいな存在、おとうさんみたいな存在、年の離れたおにいさんみたいな存在・・・って、みんな家族にたとえられる(笑)。
はぎの
おばあちゃんもいるのね(笑)。
すみか
いつもお手製のジャムを「要るならあげるよ~」って持ってきてくれたり(笑)。
はぎの
逆に教育学部で、う~ん、これは・・・ってことはありますか?
ゆうた
嫌なところはないんですけれども、やりにくいなっていうのは、模擬授業を個人ではなくグループ単位でやるときに・・・
すみか
うんうん。
ゆうた
気心の知れた同じ専修の仲間ならいいんですけど、学籍番号順に適当に割り振られてつくられた仲間だと、話し合いの時間も持ちにくいし、中にはコミュニケーションが取りにくい子もいたりして。そもそも授業って最終的には一人でやるのに、なんでグループ?って思ってしまいますね。教員養成だったら、一人のほうがためになるんじゃないかなって葛藤しました。
はぎの
難しいところですね・・・授業時間が限られている中で、みんなに回さなくてはならないというのもあると思います。それに、いつかは一人で取り組むことになる授業づくりだからこそ、今はいろいろな考え方を衝突させながらみんなでつくってみよう、ということもあるでしょうし。
ゆうた
もちろん、一人ではやりきれなくて、仲間がいるから何とか乗り切れたっていう人もいるんでしょうけど・・・。ただ、逆に言えば、教育学部でマイナスに感じたのは、そのくらいなんです。
すみか
うん。
はぎの
最後に、これから琉球大学教育学部を目指してくる受験生、高校生の皆さんに向けて、メッセージをもらえますか。
ゆうた
今から「絶対教員になる」って思っている人は多くないかもしれないし、まだ何をしたいかが見つかっていない人もいると思うけれども、少しでも「先生」っていう存在が頭に引っかかっていたら、教育学部を目指していいと思います。教育学部で学びながら、「やっぱり先生っていいな」と思ったら、そのまま突き進めばいいし、「ちょっと違うな」と思っても、教育学部での学びは将来に活かせると思うので。それに、たとえば自分の数学教育専修でも、数学という専門に夢中になることもできるから、答えを探しに来たらいいと思う。
すみか
わたしは高校時代、ぎりぎりまでどこの大学に進学しようかって悩んだんですけど、今では、琉球大学教育学部の生活科学教育専修に進学して、ほんとうに良かったと思っています!すてきな仲間と楽しく学生生活を過ごせていて、教育の現場に足を運んでの体験的な学修もできるし、留学もできるし。
はぎの
ある程度は同じ将来像を共有している仲間ならではの頼もしさがあることや、体験系の学びが多いのは、教育学部の魅力ですよね。
すみか
そして、生活科学教育専修、絶対にオススメです!高校生の皆さん、ぜひ!
はぎの
すみかさんの専修愛が爆発しています(笑)。今日は二人から、すてきな話を沢山聞くことができました。長時間、ありがとうございました!
すみか
ありがとうございました!
ゆうた
ありがとうございました!