おしゃべり 学部長×学生
  • 中央: 伊藝 愛倫 (いげい まりん)
    小学校教育コース教育実践学専修 4年次 沖縄県立名護高校出身
  • 右側: 小渡 宇翔 (おど たかと)
    中学校教育コース社会科教育専修 4年次 沖縄県立那覇高校出身
  • 左側: 萩野 敦子 (はぎの あつこ)
    国語教育専修所属 2020年4月から教育学部長

はじめに

はぎの

はぎの

琉球大学教育学部に関心をもってくれている受験生や高校生の皆さんなどにお届けするため、今日は教育学部を知り尽くした4年次のお二人に、教育学部で過ごす学生生活の話をうかがいます。よろしくお願いします。

なぜ教員に?そして教育学部に?

はぎの

はぎの

教員を目指している二人ですが、まりんさんはどうして教員になりたいと思ったの?

まりん

まりん

きっかけは、中学生時代の職場体験で母校の小学校に行ったことです。改めて子どもが好きだと実感したし、やりがいを感じました。

はぎの

はぎの

まりんさんは北部の名護高校出身で……

まりん

まりん

はい。学校教育専攻の推薦入試に沖縄県内地域指定枠(※1)があって、小学校教員を目指す自分にぴったりだと思いました。

はぎの

はぎの

琉球大学以外の大学、県外などの受験は考えなかったんですか?

まりん

まりん

県外と迷いもしましたけど、やっぱり沖縄で教員になりたいという想いが強くて、沖縄のことを深く学びたいなと思って琉大に決めました。

はぎの

はぎの

たかとさんの進路選択の経緯は?

たかと

たかと

高校生のころ、社会科が得意で日本史や世界史を友達に教えることが多かったんです。人に教えるのが楽しく感謝されるのも嬉しくて、やりがいを感じられる職業なのかなと教師を目指すようになりました。最初は県外の教育学部を目指したんですが、センター試験(※2)の点数だとか(笑)いろいろなことを考慮したというのと、小中高全部の免許が取りたかったので、県内で唯一全て取れる琉大の教育学部に決めました。

はぎの

はぎの

社会科では歴史が一番?公民は?

たかと

たかと

公民も好きですね。実は卒業研究は政治学でやってますし。

はぎの

はぎの

そうなんだ。卒業研究については、あとでまたゆっくり聞かせてくださいね。

(※1)学校教育専攻の学校推薦型選抜は、募集人員10名のうち2名を「沖縄県内地域指定推薦」とし、「沖縄県北部地域ならびに沖縄県離島地域に所在する高等学校卒業見込みの者」であることを出願要件としている。
(※2)旧「大学入試センター試験」。令和3年度から「大学入学共通テスト」となった。
おしゃべり 学部長×学生

大学生活はイメージどおり?

はぎの

はぎの

高校時代、大学生活に対していろいろ想像していたと思うんですが、実際に琉大の教育学部に入ってみて、入学前のイメージとギャップはなかったですか?

たかと

たかと

高校で琉大オープンキャンパス参加が必須だったから教育学部の雰囲気にも触れたつもりだったんですが、実際入ってみたら、イメージしていたよりも楽しいと思いました。人と人とのつながりが教育学部は強いから……学年間もそうだし、横のつながりも持てたので。

はぎの

はぎの

楽しくなさそうだと思ってたの(笑)?

たかと

たかと

中学校教育コースの社会科は募集人員3人なので、入学前は4年間ずっと3人だけで授業を受けると思ってたんです(笑)。

まりん

まりん

それは楽しくなさそう(笑)。

たかと

たかと

自分が調べ切れていなかったのかもしれないんですけど、中学校コースは小学校コースと一緒に勉強する(※3)ってわかってなくて。入ってみてから、「あ、仲間いっぱいいるんだ!」って思いましたね。

はぎの

はぎの

私が所属する専修では、オープンキャンパスでも小・中両コースで一緒に勉強していくのが特色だって紹介しているけど、専修によって説明のポイントも違いますもんね。社会科の先生方に伝えておきます(笑)。3人だけの4年間じゃなくてよかったね。さて、まりんさんは、どうでした?

まりん

まりん

自分はギャップというのは特になくて、オープンキャンパスのときから先輩たちがキラキラしていて、自分も来年この場所にいたいって強く思いました。入学した後も仲間たちが皆コミュ力高くて、楽しいなってずっと思っています。

はぎの

はぎの

まりんさんの教育実践学専修の学生は全体にコミュニケーション力が高いなって印象は私にもありますが、学生から見てもやっぱり他専修より高い感じ?

まりん

まりん

入学時のオリエンテーションで学校教育専攻は、新入生が50人いる(※4)中で一人一人挨拶するんですけど、その時からみんな個性出して自由にしゃべっていて、やっぱりみんな教員を目指しているだけあってアピールが得意なんだなって刺激をもらいました。でも圧倒されるわけじゃなく、楽しいです!

はぎの

はぎの

たかとさんから見た社会科教育専修の雰囲気はどうですか?

たかと

たかと

社会科の学生は学校教育専攻ほどのコミュ力はないかもしれないんですけど、先輩入れても全員で行動しやすい人数なので、すぐにボーリングや食事会に行ったりとか、当たり前にできたんですよね。すぐに打ち解けられましたね。

(※3)小学校教育コース教科教育専攻と中学校教育コース教科教育専攻は、入試は別だが、入学後は教科ごとに「専修」の仲間となり、4年間合同カリキュラムでその教科内容を学んでいく。
(※4)学校教育専攻は、2年次以降は教育実践学専修と子ども教育開発専修に分かれるが、最初の1年間は50名合同で教育を受ける。

印象に残った授業は?

はぎの

はぎの

これまでの大学生活を振り返って、印象に残っている授業について教えてください。

まりん

まりん

3年次の授業「離島へき地体験」で石垣の八島小学校に行ったことです。コロナ禍だったんですけど、感染対策しながらも子どもたちと深く関われました。島の子どもたちはとっても純粋で可愛かったです。小規模校ならではの教師と児童との近さ、子どもたち同士も勉強を自分たちで教えあったり声かけあったり仲良しで、離島ならではの温かさを学ばせてもらった実習でした。

はぎの

はぎの

その頃のまりんさんを知っているけど、すごく充実してて、楽しそうだったもんね。たかとさんは?

たかと

たかと

1年次で履修した「琉球・沖縄史を学びあう」が印象的です。社会科教育専修は必修で、他学科からは数名しか取らない科目なんですけど、講義形式ではない内容でした。高校時代も琉球史に興味は持っていたんですけど、歴史をいろんな視点で見る大切さなどを通して、初めて「答えはない」学びの価値を実感した授業でした。僕にとっては、この授業がその後の教職科目の基礎になった気がするので、社会科でなくてもぜひ受講してほしい。僕は楽しかったです。

はぎの

はぎの

この授業は、「現代的・地域的教育課題に関する科目」(※5)のカテゴリに入っているから、誰でも何年次でも受講できるんですよね。琉球史の中にみんなが放り込まれて、さぁあなたならどうこの世を生きる?というような感じかな。社会科の学びって暗記教科的なイメージが強くなりがちだけど、社会科って本来こういう教科なんだなってことを知るうえで、すごく重要な機会になったようですね。

たかと

たかと

もう一つ挙げてもいいですか(笑)?社会科専門科目の「社会科教育研究」、専修の中では「地域調査」と呼ばれているんですけど、県内の特定地域に関する社会科資料集を同期(同学年)のみんなで一冊作るという内容なんですね。僕たちの学年は中城村の資料集を作ったんですけど、本当にいろんなところに調査に行って、役場の人に指導してもらいながら現地調査したり、地域の子どもたちに取材したり。そういったアポ取りから全部自分たちでやるっていうのは、経験値アップにつながりました。それに、資料集を自ら作ることってなかなかないじゃないですか。教師は授業するときに教材を選ばなくちゃならないけど、教材づくりを通して選ぶ視点を身に付けられたと思います。夜遅くまで大学に残って作業するなど大変だったんですけど、面白かったです。

はぎの

はぎの

そういう「つくる」系の授業はいいね。この授業も、たかとさんにとって重要な土台になっているんだね。

たかと

たかと

そうですね。社会科教育系の授業は、先生方も絶対に「答え」を教えないので怖い反面、社会科という教科にとってすごく大切なことだと思います。

はぎの

はぎの

「答え」を知ることが重要ではなくて、「答え」を追い求めることが重要なんですよね。授業を通して学び取った視点ってわけですね。まりんさんは、「離島へき地体験」を通して学び取った視点はありますか?

まりん

まりん

八島小学校の先生や引率してくださった大学の先生から「島の経済状況や家庭的な要因から、ここにはいろんな子どもたちがいるので、困り感に注目して観察してみると視野の幅が広がるよ」と助言されたんです。この子は何に困っていて、どんな特徴があるのかを、しっかり見取るという視点を、強く意識させられました。

はぎの

はぎの

子どもの姿から「何に困っているのか」を見取ることで、その子にとってその場で一番適切なアドバイスができるってことかな。教師にとって大切なことですね。

(※5)教育学部独自の授業科目カテゴリー。現代的な教育課題や沖縄県ならではの教育課題に関わる科目が提供され、学生は4年間で8単位(ほぼ4科目相当)を履修する必要がある。
おしゃべり 学部長×学生

授業以外の活動の思い出は?

はぎの

はぎの

二人とも大学生活の中でいろいろな活動をしてきていると思うんだけど、今後教職に進む自分にとって意味があったと思える、授業以外の活動があれば、ぜひ聞かせてください。

たかと

たかと

1年次の夏に夏季短期海外合宿に参加して、ベトナムのホーチミンで10社くらいインターンをやったんです。その中でベトナムの孤児院に行きました。先生というよりは日本から来たお兄さんという立ち位置だったんですけど。沖縄は相対的貧困が問題だって言われますけど、そこは絶対的貧困で、貧困世帯の子どもたちに会ったときには衝撃を受けました。あるお母さんが「自分たちは缶を拾う仕事しか知らない」と話してくれたんです。自分にはゴミを拾う仕事以外のノウハウがない、情報がないと。そういう人たちが集まっていて、電気もなくゴミの臭いがするような環境で生きている子どもたちがいて。そこで支援をしている日本人の方の話も聞かせてもらいましたが、本当に素晴らしい活動だと思いました。

はぎの

はぎの

子どもたちに「何で勉強しなきゃいけないの」って聞かれたときの、答えがそこにありますよね。教育を受ける権利を行使して、文字を書ける・読める能力が得られると、将来缶を拾うだけじゃない、もっと自分の望む仕事に就ける可能性が出てくるんだよね。学ぶことは将来を選択できるようになるための、すばらしい権利なんだよと。たかとさんは、ベトナムで見てきたことや聞いてきたことをもとに、子どもたちに「将来できることの幅を広げるために、勉強するんだよ」って、実感として伝えられるじゃない?それはすごく、教師としてのたかとさんの強みになる経験だという気がしますね。

たかと

たかと

あとは、水を飲んでお腹を壊したというのもいい経験でした。あまり水は飲まない方がいいと思います(笑)。この短期海外合宿は、共通教育の授業で紹介されて応募したんですけど、教育学部から参加したのは自分一人だったんですよ。先輩には何人か教育学部生もいたと思うんですけど。県費で行けるので、おすすめです。

はぎの

はぎの

何が将来自分のために役立つかは実際やってみなければわからないから、視野が拡がりそうな活動に積極的に飛び込んでみるというのは、とっても重要だよね。

たかと

たかと

1年次の春休みには、「Gutsインターンシップ」(※6)で県外に行って、スポーツスクールに派遣されたんですけど、スポーツを通して子どもたちとの接し方などを経験したいと思っていました。それに普通の会社で働いてみるというのは、とてもいい経験になったなと思います。

はぎの

はぎの

たかとさんは何かスポーツの経験があるの?

たかと

たかと

バスケをやっていました。でも、インターンシップではサッカーをやりました。ある程度裕福な世帯の子どもたちが相手でしたけど、そこでもまた子どもについていろいろ考えることもできて、かつインターンという形で企業に入って社会経験ができたのが良かったと思います。教員は社会経験値が低いようにも言われがちな気がするので。2年次では、「ドリームプランプレゼンテーション」(※7)というSDGsと関わっている県のイベントの運営に、学生スタッフとして関わりました。ドリームプランというのは、大人が真剣に夢を語って未来設計図を発信するというものなんです。本当にたくさんの大人と関わって話すこともできたので、つながりができたかなと思います。

はぎの

はぎの

いろいろな活動が、全て教員になるうえでも意味を持ちそうですね。イベント運営ひとつ取っても、学校っていろんなイベントを限られた空間や資金、人材でこなすことが多くて、結構創意工夫が求められるから。まりんさんはどうですか?

まりん

まりん

単位も取れるけれども、一般的な授業とは違う活動として頑張ったことでは、2年次・3年次で参加した「コックさん学校」(※8)が印象に残っています。2年次の時はコロナ前だったので実際に子どもたちを集めて「コックさん学校」を開校することができ、初めて子どもたちを相手に一人で45分の授業をしました。緊張したけど、教育実習より早く子どもたち相手に経験を積めるというのが「コックさん学校」の特徴です。先生、先輩、仲間たちから自分の授業に対して授業後のリフレクションで「もっとこういうことができるよ」っていっぱいアドバイスをもらえました。それに先輩方の授業からは、「こういう手立てがあるんだ」とか「こういう言葉かけしたら子どもたち惹きつけられるんだ」とか、具体的なこともたくさん学びました。他の専修の仲間達との繋がりもできるっていうアピールポイントも新入生に推したいです!ぜひ、後輩たちにも続けてほしいです。

はぎの

はぎの

まりんさんが3年次の時の「コックさん」はコロナのために子どもたちを呼べなくて、模擬授業の形にならざるを得なかったのは残念だったけどね。コロナが収まったら、また子どもたちを呼んで復活させたい取り組みですよね。

たかと

たかと

今取り組んでいる活動について話していいですか?僕は、県事業の選挙管理委員会の運営スタッフだとか「明るい選挙推進協議会」(※9)の大学生スタッフだとか、沖縄の投票率を上げるためのオンラインサミットのようなインベントで大学生パネラーをしたりもしています。そういった経験を踏まえて、学生団体「FORCE(フォース)」(※10)を立ち上げました。所属専修にとらわれず、15名の学生が参加しています。その仲間で、西原町を舞台に「miniにしはら」という「こどものまち」をつくります。「こどものまち」は県内外や海外でも行われている取り組みなんですけど、どうしても大人主導になりがちです。そうではなく子どもたちが自分たちでまちをつくって動かして、仕事も決めてお金のことも決めてという、市民生活を体験するんです。いま頑張って準備を進めているところです。この活動では、これまで僕がつながってきた大人たちが情報を広めてくれたり、クラウドファウンディングで集めた活動資金の目標額をクリアできたり、学外の方々にとても助けてもらっています。そういう意味でも1~3年次にいろんなことをやっていてよかったなと思います。

はぎの

はぎの

知っていたら協力できたのに!教育学部の学生にも周知したい活動ですね。

(※6)特定非営利法人沖縄人財クラスタ研究会が運営する「おきなわ企業魅力発見事業(通称Gut’s)が県内大学生対象に実施している2週間のインターンシップ。
(※7)こちらも特定非営利法人沖縄人財クラスタ研究会が主催するイベント。事前に選考されたプレゼンターたちが、自らの夢を実現に導くための事業についてプレゼンテーションする。
(※8)琉球大学教育学部の学生が毎年20名弱集まって、近隣小学校の児童を対象に行っている模擬学校。“国”語と“算”数を楽しく学ぶので「コックさん」。
(※9)公益財団法人「明るい選挙推進協会」には全国に加盟組織があり、沖縄県にも「沖縄県明るい選挙推進協議会」がある。(ちなみに会長は教育学部の上地完治先生。)
(※10)「地域に根ざした」「こどもの主体」「政治的有効性感覚」 をコンセプトに活動する、琉球大学の学生15名(うち教育学部生14名)による学生団体。
おしゃべり 学部長×学生

卒業研究について聞かせて!

はぎの

はぎの

4年次といえば、やはり卒業研究について聞かなくてはね。

まりん

まりん

将来は沖縄県北部、国頭地区で教員になりたいと考えているので、それに結びつくよう、北部の教育課題をテーマにしています。離島とかへき地であることによる少子化、過疎化の波を受けて学校の統廃合も進んでいるんですけど、統廃合後の新校区での地域学習について考えているんです。統廃合で中心部に一つになってしまった学校での地域学習というのは、子どもたちが生まれ育ったそれまでの学校区に根ざしていない学習になってしまうのではないか、という疑問が出発点です。子どもたちの実生活や身近な地域とつながる地域学習を、統廃合が進んでいる新校区でどのように実現していったらいいのかなということを、考えています。

はぎの

はぎの

融合とかハイブリッドとかを目指しているのかな。それって、学校に限らず世界の課題かもしれないね。

まりん

まりん

人が中心部に集まったらその分、残された地域は限界集落化してしまうとか、地域の人たちは子どもたちの地域への愛着心を高めたいのに、学校が統合になって別の地域と一緒になってしまうっていう狭間にあって。

はぎの

はぎの

フィールドワークもするの?

まりん

まりん

はい。今対象地域として考えているのが、4校が統合して1村1校となってしまった大宜味村です。元々あった4つの校区には、それぞれの地区ならではの地域学習が行われていたので、それをどう新しい学校で活かせるかと。地域方々の、こんな教育を取り入れてほしいという願いも踏まえたいし、でも授業時数が限られている中でどのようなものができるのかを、検討しています。教育実践学専修の先生に、当時統廃合に携わった方々につないでいただいて、お話しする機会を持ったりします。

はぎの

はぎの

とても興味深いですね、自分の将来に関わることを研究しようとしているんだね。たかとさんは?

たかと

たかと

高校の生徒参加の自治の実態と教員の意識の調査を考えています。学校参加とか、今話題の校則だったりだとか。たとえば、ジェンダー意識が変わってきて制服選択制にも変化が見えつつあると思うんですけど、その中で高校生という、本来学校の主体となるべき人たちの意見が、実際どれくらい取り入れられているのか。たぶんあまり取り入れられていないだろうという仮説のもと、高校をフィールドにした主権者教育について考えています。「子どもの権利条約」がありますけど、実際は生徒会長選挙も先生が呼びかけて候補を出させていたり、生徒会長が示す公約も学校の方針でできないことがあったりして、最終決定は職員会議で承認されるかどうかにかかっているという現状があります。でも先行研究で、教員の意識によって生徒参加が行われている事例があることもわかっています。教員にも葛藤があるはずで、やった方がいいと思いつつも、子どもたちの安全管理だとか自分の仕事量だとかを考慮して、生徒主体の活動をどうしても認められない現状もあると思います。その中で、どのような可能性があるのかを考えています。ドイツなどの海外では、生徒自身が決めるのが当たり前だという状況もあるので。

はぎの

はぎの

事例研究もあって仮説はあるということなんですけど、実際に高校生や先生にインタビューするのは今からなんですか?

たかと

たかと

事例研究には「できている」事例しかないんですよ。「実践されていて生徒が変わったよ、それは学校の先生の意識が高いからだよ」と書かれているんですけど、実際には多くの学校ではそれができない。一般的な学校で「できない」声を拾うことで、「できない」原因が探れるんじゃないかなと思っています。

はぎの

はぎの

私服の学校って、割と生徒の自治ができるという印象だけど、沖縄ってあまり私服の高校がないかな?

たかと

たかと

真和志高校は私服ですね。

まりん

まりん

泊高校とか、数えられるくらいだよね。

はぎの

はぎの

そっか、何校かはあるのか。私服の高校でインタビューするのも良さそう。私服だとある程度生徒たちの主体性が発揮されそうに思えるけれども、やっぱり先生たちの管理の下に置かれているのかとか。面白いテーマだね。

たかと

たかと

60年代の安保闘争や70年代の大学紛争の流れで、県外では高校生が変わるきっかけがあったんですけど、沖縄は復帰が72年なので、どうしても歴史的に出遅れたところもあるかなと。沖教組(沖縄県教員組合)が復帰運動を主導していたように、先生方の政治参加の意識は強かったはずなんですが、高校生はどうなのか。歴史的背景も踏まえて考えていきたいです。

はぎの

はぎの

これも根の深い研究になりますね。たかとさんは将来的には中学校教員を目指しているそうだから、生かしていけますよね。二人とも自分の根っこからテーマが湧き出てきたという印象です。頑張ってくださいね。

コロナ禍での大学生活は?

はぎの

はぎの

話は少々変わりますが、二人は貴重な大学4年間の半分を、新型コロナウイルス感染症の影響を受けることになってしまいました。そのあたりの話をうかがいたいなと思います。まずは授業のことで、遠隔授業・オンライン授業について感じるところを、少し聞かせてください。昨年(令和2年度)の前学期に、コロナの影響で急に対面授業ができない、遠隔授業に移行しなければということになって、教員も大変でした。前学期は、課題提示型授業での重すぎる課題や、慣れないオンライン授業でのトラブルや、いろいろ問題点があったのを、教員も努力して少しずつ解消できているとは思うんです。

たかと

たかと

オンラインよりは対面の方がいいなと感じます。空気が違います。授業のときってコソコソ話できるのがいいんですよ(笑)。指名されたときでも、近くの席の人とヒソヒソ会話してからなら発言できるという人もいますよね。オンラインだと独りぼっちで、心理的安全性がないので、喋ってといわれても喋りにくいことがあります。

はぎの

はぎの

教員のほうもオンラインではやりにくさがあるんですよね。対面だと学生の顔を見ながら、何がわかっていないのか、何が情報として欲しいのかを読み取って、フォローしながら発言をさせることができますが、オンラインで、特に顔出しをしてくれていないと何も読めない。多くの教員は、やっぱり対面でやりたいはず。まりんさんはどうですか?

まりん

まりん

私も対面派です!レポートは最初すごく辛くて。対面の授業だったら、授業時間内の振り返りで終わっていたものが、毎週毎週レポートが出てきて、先生方にとっては一つの授業で一つの課題だとしても、学生にとってはいくつもの授業があってレポート漬けの日々で、いっぱいいっぱいになっていました。

はぎの

はぎの

特に、先生方もさじ加減がよくわかっていなかった去年の前学期は大変だっただろうね。逆にオンラインだったけどよかったという面はありますか?

まりん

まりん

・・・。

はぎの

はぎの

素直な反応ありがとう(笑)。やっぱり教育学部は、本質的に対面が望ましいよね。

まりん

まりん

でも、遠隔だけど、先生が教壇に立って普通に板書して、それをリアルタイムで中継するタイプの授業があったんです。それはオンラインの中では有意義でした。いきなり当てられたりもするのは怖かったですけど(笑)。

はぎの

はぎの

そういう意味でも臨場感があったんですね。そのタイプの授業は、学部で助手や機材を用意してフォローする、意識的に取り組んだ形式なので、そう言ってくれて嬉しいです。

まりん

まりん

その授業は、通信環境が悪い人は教室にも来ていいよって言ってくれていたので、何回か対面で受けたりもして、融通もきいたのでありがたかったです。

はぎの

はぎの

フォローしてくれてありがとう(笑)。では、授業以外の学生生活全般において、ダメージを感じることはありましたか?

たかと

たかと

個人的には3年次で1年間オーストラリアに留学にいく予定だったんですけど、諸々の手続きをして半年間かけて作ったワーキングホリデーの計画だとかが全てパーになってしまったのは悔しかった。ただ、これに行っていたら先ほど話したFORCEの活動をしていないので、人生はどうにかなるのかなって。

はぎの

はぎの

留学に行けなかったエネルギーを別のところに転化させようっていう気持ちが立派ですよね。

たかと

たかと

でもやっぱり留学の中止はとてもショックでした・・・考え込みすぎないタイプだから立ち直れましたけど。

はぎの

はぎの

まりんさんはどうですか?

まりん

まりん

小学校教育コースの学生としては特に、附属小学校実習で子どもたちと一度も会うことなく終わってしまったのが心残りです(※11)。ちょっとやりきれなかった感はあります。その代わりに公立学校実習に行くことにしましたが、現場経験が半分以下になったのは大きいダメージでした。悔しい部分ではあります。

はぎの

はぎの

附属学校実習が普通に行われていたら、公立学校実習は行かない予定だった?

まりん

まりん

はい、教員採用試験に専念しようと考えていたので、行かないつもりだったんです。でも、母校で実習させていただくことになったので、それはそれで楽しみでもあり・・・プラスにも捉えられることではあります。

はぎの

はぎの

うん、母校でしっかり経験させてもらってくださいね。

(※11)令和2年度の附属小学校教育実習は新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、児童の登校時間に合わせて学校に入ることができず、指導教員の授業風景ビデオや学生同士の模擬授業をもとにしたディスカッションなどで対応した。附属中学校では、自分の担当する授業時間のみ教壇実習が行われた。
おしゃべり 学部長×学生

教育学部の魅力は?

はぎの

はぎの

琉球大学教育学部の魅力を、受験生や高校生の皆さんに伝えてもらえますか?

たかと

たかと

学生の互いの距離感が近いですね。先輩たちともつながりが強くて、教員採用試験どんなだったかとか、卒業論文どんなだったかとか、相談に乗ってくれるので、めちゃめちゃ助かっています。教員については、社会科は男の先生ばかりで怖いところもありますが(笑)、実践的な活動を後押ししてくださるのがありがたいです。

まりん

まりん

学生はみんなコミュニケーション力が高いので刺激になっています。あとは教職科目の授業や、授業外でもクルー(※12)の新歓イベントなどで、他専修の学生と関わる機会が多いのも教育学部の魅力かなと思います。専修の壁を越えて友だちが増えたり、先輩たちとつながったりできるのは、とても嬉しいです。教育実践学専修の先生たちは話しやすい、接しやすい雰囲気です。個性も豊かですし(笑)。

はぎの

はぎの

自分で自分を褒めるみたいですが、教育学部の学生は感じの良い子が多くて、それは他者に対して自分をひらいているからだと思っています。二人もそうですけど、自分をひらいていればどんどん人とつながれますしね。もう少し、教育学部の良いところについて続けましょう。大学という、高校の次・社会の前の場として、この学部はどんなところがお勧めできますか?

たかと

たかと

制度的な話だと、沖縄県では唯一、小中高とも免許が取れるのがいいなと思います。僕は中学校の社会科で教員採用試験を受験予定ですけど、小学校の教員免許を持つメリットはあるはずだし、小学校でも専科の流れがあるので中高の教員免許を持っているのは強みなのかなって。

はぎの

はぎの

さすがたかとさん、勉強してますね。まもなく小学校高学年で、算数・理科・外国語の教科担任制が導入されようとしていますもんね。今までも中学校と高校の教員免許は合わせて取りやすかったけれども、小学校と中学校は履修科目が多くなる負担とかが大きかったので・・・たぶん近いうちに弾力化して、両方の免許が取りやすくなるはずです。つまり他校種の免許取得は、全国的にホットな課題なんだよね。まりんさんはどうですか?

まりん

まりん

附属小学校が近くにあって学生のうちから現場に入る機会が多いというのは、私がここの教育学部を選んだ理由でもあるんです。高校生までは生徒側の立場だったけど、大学に入って早い段階から、教師側の視点から子どもたちを見させてもらえるっていうのは、とても魅力的です。

(※12)教育学部で学生主体で行われる新入生歓迎行事の実施組織。
おしゃべり 学部長×学生

教育学部の課題は?

まりん

まりん

ただ・・・私が気になっているのは、私の専修でも教員を志望する人が案外少なくて、将来的には教員になりたいけど、いったん就職して社会に出るという人が多いことです。採用試験を一緒に頑張る仲間が少ないのは寂しいですね。

はぎの

はぎの

うん、それは現実的な課題です。教育学部は、何%の学生が教員採用試験を受験したかとか、卒業後に臨任(※13)や非常勤も含め何人が教員になったかとか、数字を文部科学省に提出しなければならない。それが教員養成大学としての評価に結びつくので、つらいところです。

まりん

まりん

みんな、いずれは教員になりたいとは思っているんですよね。一度社会に出て、視野を広げて教職に活かしたいと目的をもっての就職の決断だと思います。そういう学生がいずれ教職に戻る気持ちを失わないようにするためにも、現役で教員を志望する学生を増やすためにも、教育学部は、子どもと関わる活動などもっとアピールしたほうがいいのかなって思います。教員採用試験の受験も学生の自主性に任せている印象があるので、そこにもう少し力を入れても良いのかなと思います。セミナーをもうちょっと増やしたり、採用試験について教員に相談しやすい環境を整えたりするともっと良いのかなと思います。

はぎの

はぎの

採用試験の対策セミナーは大学のキャリア教育センター主催のもの、琉球大学同窓会主催のもの、さらに教育学部で実施しているものがあって、教育学部生は3種類を無料で受講できるので、十分に提供しているつもりではあるんだけど・・・まりんさん、何かほかにこんなものがあったら良いのになっていう要望はありますか?

まりん

まりん

先生が挙げてくださったセミナーは4年次の段階でしかないので、もっと早い段階で受講できるものがあったら見通しも立てやすいのかなと思います。私自身もっと早い段階から意識を持っておけばよかったなと思うので、先生方から声をかけていただけると計画も立てやすくなるのかなと思います。セミナーの形としては、それぞれの専科を対象にした対策があると良いなと思います。先輩たちのアドバイス会みたいなものはあったんですけど、先生方からも3年次とか2年次後期とか、早い段階から意識付けしてもらえると、教員採用試験へのモチベーションにつながるのかなと思ったりします。

はぎの

はぎの

3年次夏の附属学校教育実習が教育学部生の大きな山場としてあるので、「それが終わってから」という気分になりがちなんだけど、そうじゃなくてもっと早くからってことですね。言われてみれば、教育実習に行く段階ですでに採用試験についても頭の中にあると、実習への向き合い方が深くなるかもしれないね。

たかと

たかと

僕は社会科の中学校教員になりたいんですけど、社会科って中高の教員を目指しても、最初は必ずといっていいほど教員採用試験、落ちるんですよ。受かったらすごいんですけど、採用が少なくて倍率が高い。だから、まずは臨任になるのが普通なので、臨任とは何なのか、どのような立ち位置で正規と何が違うのか、どうしたらなれるのか、そういったことも教えておいてほしい。任期付きとも違うし、臨任は一定のキャリアじゃないですか。そういったこともあらかじめ知っていれば、もしかしたら教員採用試験の受験者も増えるのかなと思うんです。あとは、教育学部で教員を目指さないことに決めた場合に、インターンに関する情報がなかったり、企業に就職したくても情報がなかなか入ってこなかったりします。そのせいで公務員を選ぶ人もいそうなんですけど、企業でも教育学部で学んだことを活かせる教育的な機関ってたくさんあると思うんです。教員にならない人へのケアの中でも、教育学部だからこそできるようなことってあるのかなと。塾もそうですが、教員以外の教育の道に対するフォローがあってもいいのかなと。塾に就職するのだって、教員免許を持ってたら強いはずですよね。

はぎの

はぎの

教育学部を出て一般企業に就職した卒業生で人事課に配属された子がいて、卒業後数年経ってからたまたま話をしたときに、教育学部を出たのが活かされていると言ってたんですね。人を見る、人と関わることへの強みが教育学部にはあると思うので、教員を諦めても教育学部での学びを活かしてほしいです。大学のキャリア教育センターは年々充実してきているので、まずはそこに意識的にリンクを貼ることですね。二人から具体的な要望が出てきて、なるほどと思いました。

(※13)臨時的採用教員(慣習的に臨時任用教員と呼ぶことが多い)。各学校で教員が病休や産休等で一定期間欠員となった際に、教員免許状を有する教員を採用するもの。非常勤講師と異なり常勤教員と同様の勤務をこなし、学級担任や部活動指導に携わることも多い。

教育学部をめざす人へのメッセージ

はぎの

はぎの

最後に、これから琉球大学教育学部を目指してくる受験生、高校生の皆さんに向けて、メッセージもらえますか。

まりん

まりん

教育学部は3年次に実習、4年次で教員採用試験と勝負がかかってくるので、1年次から2年次にかけていろんな活動に関わって有意義な時間を過ごすかが大切だと思います。自分で情報を探して動く、大学の先生にも自分から子どもに関わる活動がしたいですって積極的にアピールしないともったいないと思います。私自身もっとやっておけばよかったなって思うので、後輩たちには1年次から動いてほしいです。コロナ禍だったり、いつどういう状況になるか分からないので、後輩たちには、今しかできないことに1年次のうちからたくさん挑戦して、悔いなく過ごして欲しいです!

たかと

たかと

やりたいと思ったことは、とにかくやってみる方がいいと思います。まりんも言うように、大学では自分で情報を得ないといけないと思います。僕自身が積極的に動いて良かったと思うのは、やっぱり人脈ができたこと。学生だけでなく大人の知り合いがたくさんできて、支えてもらっています。まずは大学の先生から。いろんな先生とつながって人脈を広げていくことは、自分の可能性を広げるうえでも大切だと思っています。

はぎの

はぎの

それは一貫してたかとさんの生き方であり、強みでもあるよね。受験生、高校生の皆さん!琉球大学教育学部は、教師・教員になる、教育に携わる、という将来の目標を同じくする仲間が互いに励まし合って4年間を過ごす場所です。二人が言ってくれたように、距離感が近くアットホームな雰囲気のある学部ですので、ぜひ入学して二人のようなすてきな大学生になってください。まりんさん、たかとさん、本日は沢山のお話をしてくれて、ありがとうございました。

まりん

まりん

ありがとうございました!

たかと

たかと

ありがとうございました!

おしゃべり 学部長×学生