卒業生インタビュー

学校現場で若手教員として頑張っている卒業生にインタビューしました。

今回インタビューさせていただいた3人は、琉球大学教育学部出身で現役時に教員候補者選考試験に合格し、それぞれ教員として3年目を迎えています。 令和4年12月、大学を訪れた3人に、初任から現在に至るまでの苦労や克服の過程、いま充実した教員生活を送れている理由などについて、語ってもらいました。

卒業生インタビュー
  • 話し手:ももこさん(写真左側)
    在学中は数学教育専修に所属。現在は県内中学校勤務
  • 話し手:ももかさん(写真中央)
    在学中は教育実践学専修に所属。現在は県内小学校勤務
  • 話し手:まおさん(写真右側)
    在学中は国語教育専修に所属。現在は県内中学校勤務
  • 聴き手:萩野敦子(はぎのあつこ)
    国語教育専修所属 2020年4月から教育学部長

教員3年目の現在地について

はぎの

3人とも教員になって3年目だけど、いま率直に、教員生活はいかがですか?

 

ももか

1、2年目に比べて校務分掌が重くなりました。今年度、GIGAスクール構想関連で情報担当をやっているのですが、子どもたちのタブレット管理など責任の重い役目です。それから、4年生の学年主任もしています。去年までは自分のクラス、自分の授業だけで精一杯だったのが、学年全体、学校全体を見ながら仕事をすることが増えてきたなあというのが実感です。全体をやりながら自分のクラスを見る、そのバランスが難しいなと思いながら、日々過ごしています。

 

はぎの

学年主任?3年目でそれって、現場ではよくあるの?

 

ももこまお

「いやいや」と横に首を振る

 

ももか

そうですね、他の先生にも聞いたことがないって言われます(笑)。あまりないことみたいなんですけど、たまたま私の学校が今年度、本務教員が新しく入ってこなくて、今の学校で中学年の担任の経験がある本務教員が自分だけしか残っていなかったんです。本務教員が足りない分は臨任の先生にも学年主任に入ってもらっているとのことだったので、4年の主任は私がやるしかないって(笑)。

 

はぎの

それにしても大抜擢でしょう。それだけの評価を2年間で得たってことだよね。

 

ももか

いえ、偶然という要素はあって。GIGAスクール構想がらみでICTを活用した研究授業を誰かがやらなきゃならない、それを私がすることになったという経緯があったり、学年主任のほうは初任から二年間3年生を持って今年は持ち上がっての4年生だから、若手だけれど慣れていたり、そういうことが重なったんです。

 

はぎの

それでも、しっかりしていないとね、そこまではならないと思うけどな。

 

ももこまお

「うんうん」と縦に首を振る

 

まお

私は中学校教員3年目にして初めて3年生、受験生の担任になって、責任重大だなと。何をするにしても担任が導いていかないと、子どもたちのメンタルが落ちてしまうんです。いつも一人一人を気にかけて、何か気づいたときにぱっと動かないとだめだなと。昨年までは周りの先生方がいつも気にかけてくれたけれど、もう今年あたりからは、自分で責任をもってやるようになった感じです。人に言われてやるのではなく、自分で考えて行動するようになったというのが、毎日ドキドキはしますけど、一番大きな変化です。

 

はぎの

教員として自立してきたのね。

 

まお

まだまだ若手だから、同僚の先生方も気にかけてはくださるんです。「最近、あなたのクラス、こうこうじゃない?」と声をかけられて、「あ、そういうふうに見えているのか」って気づかされることもあります。そんなとき、「どうしたらいいでしょう?」って相談すると、先輩の先生は「こういうふうにしてみたら?」と経験を踏まえて助言をしてくれます。昨年までは、それで満足していたんですけど、最近は、「頼ってばかりでなく、何かお返ししなきゃ」と思って、たとえば私だと、ICTなどは他の先生方より強かったりするので、「お手伝いしましょうか」って積極的に声掛けさせていただいています。3年目に入って、同僚の先生と互いに助け合える関係になってきたなと。貢献できているって思えるのが、すごく嬉しいです。

 

はぎの

すごいね。子どもたちとの関係はどう?

 

まお

昨年までは、子どもたちの行動を見て、その行動を叱っていたんです。けれど3年目に入って、その行動の向こうにある子どもたちの背景を考えることができるようになったなと。「あなた、さっきこうこうしていたけど、それってこうこうだからなんじゃない?」と声掛けすると、子どもがはっとして泣き出したりするんです。私も子どもたちの背景を想像して伝えられるようになったし、そうすると子どもたちも自分の思いを言葉で伝えてくれるようになるんですよね。子どもたちとの関係が、「一人の人間対一人の人間」って感じになってきたなと。

 

はぎの

信頼関係が築けるようになったんだね。

 

ももこ

二人ともすごいなあって思いながら聞いているんですけど(笑)。私は中学校教員3年目に入って、子どもを大切にしている先生ってすごいなあって、同僚の先生方を見ながら改めて感じています。子どもを大切にしていると、そこを通して保護者も信頼してくれるんですよね。生徒指導でも、子どもを信頼していないと、言葉が通じないんだなってことが実感できるようになりました。初任のころは、授業が第一関門、授業が何より重要なんだと思っていたけれど、3年目になった今は、授業は四番手だなって思います。

 

まおももか

そうそう、ほんとにそんな感じ。

 

ももこ

一番最初に来るのは、生徒との信頼関係をつくることですね。

 

まおももか

じゃ、一番目と四番目の間にくるのは?

 

ももこ

え~と(笑)、みんなで考えようよ(笑)

 

ももか

私だったら、二番目は、自分自身の授業以上に、「学年」「学校」という大きな視野から日ごろの教育活動を見通すこと、かな。学校教育は「学年」「学校」という大きなところから回っていて、全体から見たり先を見通したりしたうえで、クラスのこと授業のことを考えなくちゃならないんです。学校での立場も責任がついてくるようになっているので、それをすごく感じます。

 

ももこまお

確かにそうだね。

 

まお

それから、三番目としては、信頼関係をつくる延長としての学級経営、子どもたちが過ごす環境づくりですね。それがあってはじめて、授業が来るんだっていうのが実感です。

 

ももか

そこに泣いている子がいたら、授業を進めたくても進められない(笑)。

 

まお

泣いてるのに「はい、そこ、教科書開いて!」っていうわけにはいかない(笑)。そこを整えてから授業に入るけど、そこでもう一度最初の信頼関係づくりに戻るって感じですね。

 

はぎの

いま次々と挙げてくれた四つの要素が、ぐるぐる回っていくのが、学校教員の世界なんだろうね。

初任のころを振り返って

はぎの

初任のころの自分はどんなでした?いま、振り返ってみると?

 

ももか

初任で受け持ったクラスの子どもたちが、かなり個性派ぞろいで大変でした。けんかが多く、そのたびにいじける子、泣き出す子が複数出て、放課後や休み時間に何度も話し合いをしたり、登校しぶりや保健室登校、授業中に居眠りする子への対応や保護者とのやりとりがあったりと、結構手のかかるクラスで、あとから他の先生に聞くと「初任では学級崩壊させるんじゃないか」って心配されていたらしいです(笑)。確かに、こっちで喧嘩している子がいるかと思えば、あっちで泣いている子がいて、授業以前に一人一人への対応をしながら全体を集団としてまとめるのが本当に大変でした。でも、この初任の経験があったからこそ、2年目以降は、どうすればいいかが自然と身についてきました。トラブルがあったら、まず他の子どもたちを「これをやっていてね」と落ち着かせて、それから個別の対応に当たればいいんだな、とか。 1年目は、じんましんが出たんですよ!でも、気にしすぎないように、考えすぎないようにと自分に言い聞かせて、「とりあえず1年は、やってみよう、それから先を考えよう」と思って乗り切りました。それに、初任研の頃は、初任研指導の先生だけでなく、いろいろな先輩方が自分のために示範授業をしてくださったり、研修で私が抜けるときは校長先生や教頭先生まで授業をしてくださったりと、多くの先生方が動いてくださるので、ここでやめるわけにはいかない!という気持ちもあって。

 

まお

私はももかとは逆に、1年目はひたすら楽しかった。自分のクラスにグレーゾーンの子が多いことは感じていたけれど、自分が大学時代に小学校教育に接することが多かったせいか、中学生は小学生に比べればすごく出来てるっていうふうに見えていたので、「とにかくほめて、とにかく受け入れて」という気持ちでやってました。私が「生徒のこと、大好き!」って姿勢でいたせいか、子どもも「先生のこと、大好き!」って感じで向き合ってくれて、なんでも話してくれる、すごく近い距離感でした。 ところが持ち上がりで2年目に入って、子どもたちが思春期に入って反抗されることが増えて、なんでも話してくれるというわけにはいかず、距離がみるみる離れていったんです。自分の担任クラスの生徒が他の教科担任の先生方とトラブルを起こすこともあって、「あ~、これまで解放させすぎた、これから社会に出ていくときにこのままではいけない」って実感したんです。けれども、今思うと私の指導の仕方って、子どもたちが言葉にできないから先回りして自分の言葉で「こうこうこうだよね」と指示したり、型にはめるような叱り方をしたり、子どもたちに寄り添っていなかった。だから、子どもたちにも「先生、怒ってばかりだよね」と言われるようになってしまったんです。  3年目に入って、2年目の反省から、もっと子どもたちとコミュニケーションを取らなくてはと思いました。彼らが自分たちで考えているようなら、それに対して助言するようにして、できていないなと思ったら、その背景を考えるようにしました。「一緒に考えよう」って肩の力を抜いてできるようになりました。 肩の力を抜いた結果、自分だけで子どもたちを見るのではなくて、教科担任など他の先生方と一緒に子どもたちを見るのが学校なんだっていう意識も、持てるようになりました。

 

ももこ

わかる~。

 

はぎの

1年目で壁にぶつかる人もいるし、1年目がそれなりにうまく行った場合でも2年目に壁にぶつかるし、必ずどこかで壁にぶつかるけれど、そこでやめちゃうのではなく、続けることが重要なんでしょうね。それがあるから、どうすればよいのかが見つかるんだね。

 

ももこ

私は初任のとき、苦手だったのは生徒指導です。生徒指導は、子どもに伝える言葉がうまく出てこなかったりして苦労が多かったけれど、周りの先輩の先生方にすごくフォローしてもらいました。先生方が「ももこ先生は、こうこうこう思っているんだよ」「ももこ先生は締め付けるタイプじゃないからね」とかって言ってくれたりして、ほんとうに助けられています。

 

はぎの

初任だから出来なくて当たり前なんですよね。そこで、素直に先輩の力を借りられるというのが、ももこ先生のいいところだし、それは重要なことですよね。

教員の楽しさ・楽しみ

はぎの

教員をやっていて一番「楽しい」と思える瞬間はいつですか?

 

ももこ

行事です!行事が終わった後の、勝っても負けても一体感が感じられる、その達成感も大好きです。

 

まお

行事って、子どもの成長が一番感じられるところだよね。

 

ももこ

行事ごとに、違う生徒が活躍するのもいいなって思います。

 

はぎの

それぞれの個性や特徴が出てくるんだね・・・それを認め合えるクラスに、ももこ先生がつくりあげているということじゃない?

 

ももこ

そう・・・なんですかね(笑)。

 

まお

私は、いま1年生と3年生の授業を掛け持ちしてるんですが、自分が中学生のころ勉強が好きだった気持ちを思い出して、なんとか子どもたちに「勉強は楽しい!」と思わせたいと思って、授業づくりを頑張っています。なので、工夫して授業したあとに、「先生、今日めっちゃわかった」とか「ここは絶対100点取れると思う」とか「今日の授業、楽しかった!」とか子どもたちが言ってくれたとき、授業が成功したなと思えるときが、最高に楽しく感じます。やりがいを感じるというか。 大学時代に実習や授業などでもらった友達の学習指導案を全部取っておいてあるんですが、教材研究するときに見返すと、いろいろヒントがもらえます。そのヒントに、自分が伝えたいことや自分なりの工夫を加えて授業づくりをしています。

 

はぎの

へえ、そうなんだ!でも、すごく時間かかるんじゃない?

 

まお

かかります(笑)。でも、睡眠時間は削らないようにしてます。睡眠が足りないと、生徒に当たりが強くなっちゃう(笑)。

 

ももこももか

わかる~。

 

まお

すっきり朝を迎えるために「寝よう!」て、寝ることは本当に大事で、授業づくりでも生徒指導でも、「今日はここまで!あとは明日!」と割り切って、寝ます。

 

ももこももか

(口々に)だよね。

 

ももか

子どもたちが成長していく姿を見続けられるのが楽しいです。跳び箱が苦手だった子どもが跳べるようになったり、おとなしかった子どもがいつのまにか授業で友達にアドバイスをするようになったり。担任をしていると、授業でも授業以外でも、いろいろな形で子どもたちの成長を見ることができるので、そんな姿を見るのがとても嬉しい。持ち上がりの良さでもあります。しかも小学校で、一日中ずっと見ている子たちなので。

 

はぎの

三人とも楽しそうだなって思うんだけど、教員生活を楽しめるようにするためのコツを教えてください。

 

ももか

まおが言っていた「寝るの大事!」にも通じるんですが、自分の心身が健康であってこそ楽しめる。休むときは休んで、身体も心も整えておくことが本当に大切です。

 

まお

リフレッシュで遊びに行くとか、ストレスを抱えたままにしないことが大事。食べるとか(笑)。

 

ももか

私は、職員室がいつも笑いが絶えない明るい空間なので、いつも職員室で同僚の先生とお話をしてます。

 

ももこ

わかる・・・私もそれです!おしゃべりの中で、先輩の先生が「私だったらこうする」「私はこうしたよ」と言ってくれるのが、すごくヒントになって、職員室で他の先生と過ごす時間を大切にしています。

 

はぎの

それは、自分が心を開いているからでしょう。

 

まお

不安になることも確かにあるけど、そういったことは、とりあえず言葉にしてみます。言葉にすると、何がだめだったのか見えてくるので、それを解決するための本を手当たり次第読んだり動画を見たりします。それで、試してみる。教員は試してみることの繰り返しで、逆に言うと、試す楽しさがあると思います。

 

はぎの

子どもと一緒に成長すればいいんだから、エラーを恐れないことは大切でしょうね。エラーがあるからこそ、フォローがあって、また成長できるんだから。

後輩の皆さんへのアドバイス&メッセージ

はぎの

教員をめざすことを不安に思っている後輩がいるとして、何かアドバイスをお願いします。

 

ももか

さきほど「エラーを恐れない」と言ったことにつながりますが、大学生のうちにいろいろ行動する、挑戦してみることをしていたら、教員になっても恐れずにぶつかっていけるんじゃないかなって思います。

 

まお

挑戦は必要だね。

 

ももか

与えられてする、じゃなくて、自分で考えて何かをやってみることを勧めます!

 

まお

「教員しかない」じゃなくて、一回教員になってみて、自分のいいところ、教員に向いているところ、逆にだめなところをわかっていけばいいと思います。だめなところは直していけばいいし、いいところは伸ばせばいいから、「とにかくいったん現場においで!」と後輩には伝えたいですね。

 

ももか

やってみないとわからないよね。

 

まお

人に言うのは悪いこと、苦しいことになりがちだけれど、考えてみれば、それ以上にいいこと、嬉しいことがあるよね。「現場においで!」

 

はぎの

では最後に、一人ずつ、改めて後輩にメッセージをもらえますか?

 

ももか

大学生時代の様々な活動から得た経験や、そこから学んだこと、一緒に乗り越えた仲間の存在が、現場に出た今でも、ものすごく役立っていると感じています!遊びも勉強も、大学生の今だからできることにたくさんチャレンジして、大学生活を楽しんでください。

 

まお

偉大な先生方の実践を見て、憧れるとともに、自分には無理だと感じる人も多いと思います。でも、やってみないと自分の力はわからないです。一人で全部抱えなくてもいいんです。周りには様々な経験を持った先生方がいます。どれが道を切り拓くカギか試し続けて、子どもたちも自分も一緒に成長できたとき、教員って面白い!と感じます。ぜひ、一緒に学び続けていきましょう!

 

ももこ

教育学部生のときから、「先生になりたい!」と強く思っていました。それは、先輩方や実習先の先生方が、子どもの成長を一番に願って実践している姿を見ることができたからです。今は、同僚の先生方からたくさん学び、試行錯誤しながら、子どもたちの成長が見れることに喜びを感じています。一緒に子どもたちの成長を感じましょう!現場で待ってます!

 

ももこまおももか

(口々に)今日は前向きに話してきたけれども、実のところ、楽しいことよりつらいことのほうが多いです・・・けれども、やっぱり教員は魅力的なお仕事だと思います!!

 

はぎの

「楽しいことよりつらいことのほうが多い」のは、教員に限らず社会人として働いているかぎり、当然のことですよね。生みの苦しみや大変さがあって、そこを頑張るから、成果が得られ、お給料ももらえるわけだから(笑)。それでも、今日は三人の話を通して、つらさや苦労を乗り越えるためのヒントももらえたと思います。今日は短い時間ながら、いろいろ聞かせてくれて、ありがとう。現実的な話も踏まえて、それでも元気に教員生活を送っている三人に会えて、私もとても嬉しかったです。